映画『鬼畜』あらすじネタバレ考察！原作キャスト～評価は？

映画「鬼畜」は、1978年に公開されたサスペンス・ドラマ映画で、家庭崩壊と道徳的葛藤をテーマに描かれています。監督は野村芳太郎で、緒形拳、岩下志麻、小川真由美といった実力派俳優がキャストを務めています。この映画は、貧困や家庭内の複雑な問題を抱えた主人公が追い詰められ、最終的に非道な行為に走ってしまうという重厚な物語が展開されます。人間の内面の葛藤や社会的なプレッシャーを描き、観客に深い衝撃と印象を与える作品です。

映画「鬼畜」のあらすじ

物語の舞台は埼玉県川越市。印刷工場を営む**竹下宗吉（緒形拳）は、妻のお梅（岩下志麻）に隠れ、愛人の菊代（小川真由美）**との間に3人の子供を持ちます。しかし、印刷工場が火事で大打撃を受け、経済的な困難に直面した宗吉は、愛人の菊代に生活費を渡せなくなり、ついに菊代が子供たちを連れて宗吉の家に乗り込みます。お梅はこの事実を知り激怒し、子供たちを追い出そうとします。

宗吉は子供たちを育てたいと思いつつも、妻のお梅からの圧力に屈し、次々に子供たちを捨てていく決断をします。最終的に宗吉は罪悪感に耐えられなくなり、道徳的に追い詰められていくのです。

映画「鬼畜」のネタバレ

映画のクライマックスでは、宗吉は子供たちを一人ずつ捨てるという悲劇的な行動に出ます。次男の庄二は育児放棄の末に衰弱死し、長女の良子は東京タワーに置き去りにされ、長男の利一も毒殺を試みられますが、宗吉はそれを果たせません。宗吉は最終的に利一を海に落として殺そうとしますが、利一は漁師に救われます。

宗吉は殺人未遂で逮捕され、利一に再会した時、利一は「父ちゃんじゃない」と涙ながらに彼を拒絶します。このシーンは、宗吉が完全に道徳的に崩壊し、後悔と罪悪感に打ちひしがれる場面であり、映画の最も感動的で悲劇的なクライマックスとなっています。

映画「鬼畜」の考察

「鬼畜」は、経済的困窮と家庭崩壊が人間の道徳にどのような影響を与えるかを鋭く描いた作品です。宗吉は、愛人との子供たちを捨てるという非道な選択に迫られますが、この行動は彼自身の心を蝕んでいきます。映画は、人間がどのようにして社会的な圧力や経済的苦境に追い込まれ、道徳感覚を失っていくかを強く示唆しています。

また、この映画は、戦後日本の経済的な格差や家族制度の崩壊を描いた社会的なメッセージも込められています。宗吉が自身の道徳的葛藤に苦しむ姿は、当時の日本社会における厳しい現実を映し出しています。

映画「鬼畜」のキャスト

映画「鬼畜」には、日本映画界を代表する俳優たちが出演しています。主演の緒形拳は、道徳的に苦悩する男・宗吉を迫真の演技で描き、観客に強い印象を与えました。岩下志麻は、冷酷ながらも家庭を守ろうとする強い妻を演じ、小川真由美は宗吉の愛人役として、複雑な感情を表現しました。

映画「鬼畜」の原作

映画「鬼畜」は、松本清張の短編小説を原作としています。この作品は、1957年に雑誌『別册文藝春秋』に掲載され、その後、短編集『詐者の舟板』に収録されました。松本清張は、実際の事件に基づいたフィクションを多く手がけ、社会の暗部や人間の心理を鋭く描写する作風で知られています。この「鬼畜」も、実話をベースにした作品であり、松本の他の作品と同様に、社会問題を強調しつつ人間の道徳的葛藤を描いています。

映画「鬼畜」の評価

映画「鬼畜」は公開当初から非常に高い評価を受けました。特に、緒形拳の圧倒的な演技と、野村芳太郎の緻密な演出が高く評価され、観客に強烈なインパクトを与えました。映画は国内の映画賞をいくつか受賞し、興行的にも成功を収めました。日本社会に対する鋭いメッセージが込められた作品として、今もなお語り継がれています。

まとめ

映画「鬼畜」は、1978年に公開されたサスペンス・ドラマ映画であり、家庭崩壊と道徳的葛藤を深く描いた作品です。松本清張の短編小説を原作に、野村芳太郎監督が手掛けたこの映画は、緒形拳、岩下志麻、小川真由美といった名俳優の圧倒的な演技によって、経済的困窮や社会的な圧力に追い詰められた主人公の悲劇的な物語が展開されます。印刷工場を営む宗吉は、愛人との間にできた子供たちを捨てざるを得ない状況に追い込まれ、最終的に道徳的に崩壊してしまう様子が描かれ、観る者に強烈な衝撃を与えます。

本作は、貧困と家庭の崩壊、そして人間の内面の弱さをテーマに据え、社会的なメッセージも色濃く含んでいます。公開当時、批評家からは高い評価を受け、今もなお日本映画の傑作として語り継がれています。