「勝手にしやがれ」は、1960年に公開されたジャン＝リュック・ゴダール監督によるフランスの犯罪ドラマ映画です。この映画は、フランス・ニューウェーブ運動を象徴する作品の一つであり、当時の映画製作手法を大きく変えるきっかけとなりました。ジャン＝ポール・ベルモンドが演じるミシェル・ポワカールと、ジーン・セバーグが演じるアメリカ人ジャーナリスト、パトリシア・フランキーニの恋愛と逃避行を描いています。
フランス・ニューウェーブは、1950年代後半から1960年代にかけて、若いフランスの映画監督たちが主導した映画運動で、従来の映画の形式や規範を打破し、革新的なスタイルと内容を追求しました。ゴダールもこの運動の主要な人物であり、「勝手にしやがれ」はその代表作とされています。ゴダールは、フランソワ・トリュフォーのアイデアをもとに、手持ちカメラや自然光を多用し、ジャンプカットといった斬新な編集技法を用いることで、リアルでダイナミックな映画表現を生み出しました。
「勝手にしやがれ」あらすじ
映画は、パリで自動車泥棒として生計を立てている無法者、ミシェル・ポワカールの物語から始まります。彼は盗んだ車で逃走中に警察官を射殺してしまい、その後逃亡生活を送ることになります。ミシェルは、アメリカ人留学生でジャーナリスト志望のパトリシア・フランキーニと再会し、彼女にイタリアへの逃亡を提案しますが、彼女は彼の犯罪者としての生き方に葛藤を覚えます。
物語の進行とともに、ミシェルはパトリシアとの関係を深める一方で、警察の追跡から逃れようとするも、次第に追い詰められていきます。最終的にパトリシアは彼を裏切り、警察に通報します。ミシェルは警察に追い詰められ、パリの路上で撃たれ、最期を迎えます。彼の最期の言葉「君は本当に嫌な奴だ」というセリフは、彼が生涯抱えていたニヒリズムや、愛と裏切りの複雑な感情を象徴しています。
「勝手にしやがれ」ネタバレ
物語のクライマックスでは、ミシェルはついに警察に追い詰められ、パリの街中で銃撃されます。彼が最期を迎える際に放つ言葉は、パトリシアに向けられたもので、彼女の裏切りを受け入れたうえでの絶望感がにじみ出ています。この結末は、典型的なハリウッド映画のような希望に満ちたエンディングとは対照的で、フランス・ニューウェーブの映画が持つ現実主義的なスタイルを強く反映しています。
ゴダールは、ミシェルのキャラクターを通して、自由意志と運命、愛と裏切り、そして個人の選択がもたらす結果について深く掘り下げています。ミシェルは自由奔放な反英雄でありながら、最終的には運命に抗うことができず、悲劇的な結末を迎えます。この映画は、愛と裏切り、自由と運命という普遍的なテーマを描きながらも、その結末は観客に深い感情的な影響を与えるものとなっています。
「勝手にしやがれ」考察
「勝手にしやがれ」は、フランス・ニューウェーブの象徴的な作品として、映画史において重要な位置を占めています。この映画は、伝統的な映画制作手法を否定し、革新的な映像技法を用いることで、観客に対して新しい映画体験を提供しました。ジャンプカットや手持ちカメラの使用は、物語のテンポを速め、観客に独自の視覚的経験を提供します。
映画のテーマとして扱われる自由意志と運命の関係は、主人公ミシェルとパトリシアの行動を通じて描かれています。ミシェルは運命に逆らおうとする一方で、自らの行動がもたらす結果に対する意識が希薄であり、その無責任さが最終的に彼を悲劇に導きます。パトリシアもまた、愛と裏切りの狭間で揺れ動くキャラクターであり、彼女の選択は映画全体にわたって重要な意味を持ちます。
ゴダールは映画の中で、アメリカ映画へのオマージュや哲学的な問いかけを織り交ぜることで、観客に対して単なる娯楽映画以上の深い思索を促す作品を意図しています。映画のエンディングにおけるミシェルの運命は、愛や自由といったテーマを通じて、観客に対して問いかけを投げかける形となっています。このように、「勝手にしやがれ」は、映画の枠を超えた社会的・文化的な意義を持つ作品として、長年にわたり評価されています。
「勝手にしやがれ」キャスト
- ジャン＝ポール・ベルモンド（ミシェル・ポワカール役）: 彼は、この映画で一躍スターダムにのし上がり、以後フランス映画界を代表する俳優の一人となりました。ベルモンドは、反英雄的なキャラクターを見事に演じ、そのカリスマ性と自然体の演技が高く評価されました。彼の演技は、映画のリアリズムを強化し、観客に強い印象を与えます。
- ジーン・セバーグ（パトリシア・フランキーニ役）: アメリカ人女優であるセバーグは、この映画でフランス映画界でも評価を高めました。彼女の演技は、知的でありながらもどこか冷たい一面を持つパトリシアというキャラクターに命を吹き込み、観客に強い印象を残しました。セバーグの演技は、映画のテーマである愛と裏切りを深く掘り下げる要素となっています。
「勝手にしやがれ」原作
「勝手にしやがれ」は、フランソワ・トリュフォーが読んだ新聞記事からインスピレーションを得たアイデアを基に制作されました。トリュフォーは、このアイデアをゴダールに提供し、最終的にゴダールが映画化に至りました。映画のストーリーは、実在の犯罪事件に触発されており、それを基にしてゴダールが独自の視点から物語を展開しました。この映画は、ゴダールの自由な映画作りの精神を体現しており、彼の作家性を強く感じさせる作品となっています。
「勝手にしやがれ」評価
「勝手にしやがれ」は、公開当時から革新的な映画として世界中で高い評価を受けました。この映画は、フランス・ニューウェーブの代表作として、映画史において重要な位置を占めており、ジャン＝リュック・ゴダールの名前を世界に広めるきっかけとなりました。特に、映像技法や物語の構成が斬新であるとして、多くの批評家から称賛を受けました。
また、主演のジャン＝ポール・ベルモンドとジーン・セバーグの演技も高く評価され、彼らはこの映画を通じて国際的なスターとなりました。「勝手にしやがれ」は、その後も多くの映画作家に影響を与え続け、現在でも映画学校「勝手にしやがれ」(原題: À bout de souffle / 英題: Breathless) は、フランス・ニューウェーブの象徴的な映画で、ジャン＝リュック・ゴダール監督の1960年の作品です。この映画は、ジャン＝ポール・ベルモンド演じるミシェル・ポワカールと、ジーン・セバーグ演じるアメリカ人留学生パトリシア・フランキーニとの逃避行を描いています。映画の物語は、警察官を殺害したミシェルが、彼を愛するパトリシアとともにパリから逃れようとする過程で進行します。ミシェルは、犯罪者としての生き方に葛藤を抱えるパトリシアを説得しようとしますが、最終的に彼女に裏切られ、彼の運命は悲劇的な結末を迎えます。
この映画は、フランソワ・トリュフォーの原案に基づいており、撮影監督のラウル・クタールによる手持ちカメラと自然光の使用、そして編集におけるジャンプカットの多用が特徴です。これにより、映画は現実的かつダイナミックな印象を与え、当時の映画制作の規範を大きく打ち破りました。
映画のテーマは、自由意志と運命、愛と裏切りなど、複雑で多層的なものであり、ミシェルとパトリシアの行動や選択を通じてこれらが探求されます。映画のラストシーンで、ミシェルがパリの路上で撃たれるシーンは、映画の中で最も印象的な場面の一つであり、観客に強い余韻を残します。
キャストには、ジャン＝ポール・ベルモンドとジーン・セバーグが主演し、ベルモンドはこの映画で一躍国際的なスターとなりました。ジーン・セバーグもまた、この映画を通じてフランス映画界での地位を確立しました。
「勝手にしやがれ」は、公開後すぐにフランス国内外で大きな影響を与え、フランス・ニューウェーブの重要な作品として評価されています。また、ジャン＝リュック・ゴダールの監督としての地位を確立し、後の映画作家にも大きな影響を与え続けています。この映画は、映画史において革新的な作品として今もなお高く評価されており、映画学校や映画史の講義で頻繁に取り上げられています。
