映画『コーダ あいのうた』は、2021年に公開された感動的なヒューマンドラマ作品で、家族愛と自己実現をテーマにしています。「CODA」とは「Children of Deaf Adults(聴覚障害を持つ親を持つ健聴者の子ども)」の略称であり、主人公ルビーがこの立場にあることを基にした物語が展開されます。
監督はシアン・ヘダーで、主演を務めるエミリア・ジョーンズをはじめ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリンなどの才能あふれるキャストが出演しています。この映画は、フランス映画『エール!』を原作としており、アメリカの設定に置き換えることで、文化的な背景や家族間の絆を新たに掘り下げています。2022年のアカデミー賞では、作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門を受賞し、映画史に名を刻みました。
映画『コーダ あいのうた』あらすじ
物語の舞台は、マサチューセッツ州の小さな漁村です。主人公のルビー・ロッシ(エミリア・ジョーンズ)は、聴覚障害を持つ家族の中で唯一の健聴者として生まれました。彼女は両親フランク(トロイ・コッツァー)とジャッキー(マーリー・マトリン)、兄のレオ(ダニエル・デュラント)とともに漁業を営んでおり、家族と外部社会をつなぐ役割を担っています。
日常生活の中で、ルビーは家族のために多くを犠牲にしてきましたが、彼女自身には隠された音楽の才能がありました。高校の合唱クラブに参加したルビーは、音楽教師のベルナルド・ヴィラロボス(エウヘニオ・デルベス)にその才能を見出されます。彼の勧めにより、ボストンの名門音楽学校バークリー音楽大学のオーディションを目指すことになります。
しかし、ルビーの夢は家族との間に葛藤を生じさせます。聴覚障害を持つ家族にとって、彼女はコミュニケーションの要であり、ビジネス面でも欠かせない存在です。家族は最初、彼女の音楽の夢を理解せず、漁業の手助けを続けてほしいと望みます。家族と自分の夢の間で揺れ動くルビーは、最終的に家族の支持を得て、オーディションで「Both Sides Now」を手話を交えて歌い上げることで、夢を掴む一歩を踏み出します。
映画『コーダ あいのうた』ネタバレ
映画のクライマックスは、ルビーのオーディションシーンです。彼女はジョニ・ミッチェルの名曲「Both Sides Now」を手話を交えて歌い、審査員だけでなく観客の心をも揺さぶります。このシーンでは、ルビーが家族への感謝と音楽への情熱を込めて歌う姿が描かれます。
さらに感動的なのは、家族がルビーの歌声を理解するシーンです。聴覚障害を持つ家族にとって、彼女の歌声をそのまま感じ取ることはできません。しかし、家族が彼女の情熱や手話を通じてその意味を理解し、彼女を応援する姿が描かれます。特に父フランクとの一対一の場面では、父がルビーの喉に手を当てて歌声の振動を感じ取る描写があり、家族の深い絆を象徴しています。
映画『コーダ あいのうた』考察
『コーダ あいのうた』は、家族の期待と個人の夢の間で揺れ動く主人公の葛藤を描くとともに、聴覚障害を持つ家族とのコミュニケーションの重要性を訴えています。ルビーが家族のために尽くす姿は、彼女がどれほど家族を大切にしているかを示していますが、それが彼女の自己実現の障害ともなっている点がポイントです。
また、この映画は、聴覚障害を持つ人々が直面する社会的な壁にも焦点を当てています。ロッシ家が漁業を続ける中で、他の漁師や市場関係者とのコミュニケーションに苦労する様子が描かれ、健聴者の協力が不可欠であることが示されています。
映画のメッセージは普遍的で、家族愛、夢の追求、そして相互理解の重要性を訴えかけます。監督のシアン・ヘダーは、リアルな家族の姿を描きつつも、希望を感じさせるストーリーを展開しています。
映画『コーダ あいのうた』キャスト
本作のキャストは、それぞれが役柄に命を吹き込む素晴らしい演技を見せています。
- エミリア・ジョーンズ(ルビー・ロッシ役)
主人公ルビーを演じるエミリア・ジョーンズは、歌唱力だけでなく手話の習得にも挑戦しました。彼女の演技は、家族愛と自己実現の間で揺れ動く繊細な感情を見事に表現しています。 - トロイ・コッツァー(フランク・ロッシ役)
ルビーの父親を演じたトロイ・コッツァーは、聴覚障害を持つ俳優として、家族愛とユーモアを兼ね備えたキャラクターを体現しました。彼はこの役でアカデミー助演男優賞を受賞しました。 - マーリー・マトリン(ジャッキー・ロッシ役)
ルビーの母親を演じたマーリー・マトリンも聴覚障害を持つ俳優で、母親としての葛藤と愛情を深く描き出しています。 - ダニエル・デュラント(レオ・ロッシ役)
ルビーの兄レオを演じたダニエル・デュラントもまた、聴覚障害を持つ俳優で、家族を支えつつも独立心を持つキャラクターを演じています。
映画『コーダ あいのうた』原作
本作は2014年のフランス映画『エール!』を原作としています。『エール!』もまた、聴覚障害を持つ家族の中で唯一の健聴者として生まれた少女の物語を描いていますが、『コーダ あいのうた』はアメリカを舞台に移し、文化的背景を再解釈しています。
映画『コーダ あいのうた』評価
公開後、本作は批評家や観客から絶賛されました。サンダンス映画祭では史上最高の評価を受け、2022年のアカデミー賞では作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞の3部門を受賞しました。この受賞歴は、映画のストーリーテリング、キャストの演技、そして感動的なメッセージが認められた結果です。
映画『コーダ あいのうた』見どころ
映画の見どころは、ルビーが家族と自分の夢との間で葛藤しながら成長する姿です。特に、彼女が手話を交えて歌うオーディションのシーンは圧巻で、観客の心に深く刻まれるでしょう。また、家族の温かさや美しい漁村の風景も、この映画を特別なものにしています。
『コーダ あいのうた』は、家族愛と自己実現の物語を描き、音楽と手話の力で観客の心を揺さぶる感動的な作品です。