映画『ターミナル』は、スティーヴン・スピルバーグ監督の手による感動的な物語でありながら、観客に多くの疑問やフラストレーションを抱かせる要素が含まれています。トム・ハンクスが演じる主人公ビクター・ナボルスキーの空港内での奇妙な生活、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じるアメリア・ウォーレンとのロマンス、そしてビクターが直面するさまざまな障害。
これらの要素が絡み合う中で、なぜ観客はイライラを感じるのか?そして、アメリアの行動はなぜ多くの人にとって理解しにくいのか?本記事では、『ターミナル』の魅力とその裏に潜む複雑な感情について探っていきます。
映画ターミナル :おかしい
この映画は空港ターミナルから長期間出られなくなった主人公ビクター・ナボルスキーの、そこでの従業員との交流やそれぞれの恋愛の様子も描かれていて、コメディとロマンスの両方を楽しめる作品となっています。もちろんビクターがどうなってしまうのかその成り行きも一番の関心事ですが、そのターミナル内での彼の立ち位置がかなり混乱をきたしている様です。
かくいう私もターミナルの仕組みに明るくないので、最初の方のシーンでは警備員が見張っていれば(違法ですが)直ぐに外に出られそうな場所があったのは、ちょっとおかしく感じてしまいました。さらに入国も出国も出来なくなってターミナルで生活してしまうなんて・・と作り話かと思ったら、別の空港ですが実際に何年も住んでいた人が居るのを知ってビックリでした。そして最後にはアメリアによってもたらされた”特別ピザ”に必要な責任者のサインが貰えなくて、今まで法を守る事を心情にしてきた彼が違法行為を犯して出国してしまうのにも、少し違和感が残ってしまいました。
映画ターミナル:アメリアなぜ
次第にビクターの人柄に惹かれていくアメリアでしたが、2人がくっつく事はありませんでした。良い雰囲気だったのにとても残念でした。アメリアはなぜ元彼の方を選んだのでしょうか。そこには複雑な女心が隠されているのだと感じました。
ビクターの夢を一番に後押ししたいアメリアだったので、ビクターへの気持ちを押し殺していたのが、後で元彼に会った時の少し浮かない表情が表していた様に思えました。更にこうなって行くのは”運命”だからと自身に思い込ませていたようにも感じました。
映画ターミナル:イライラ
- 不条理な状況: 主人公のビクター・ナボルスキーが国際線ターミナルに閉じ込められるという状況自体が非常に不条理です。この設定が視聴者にフラストレーションを感じさせることがあります。
- 官僚主義と規則の厳格さ: 空港の官僚主義や厳格な規則によって、ビクターが自由に動けない様子が描かれています。特に、空港の管理者であるフランク・ディクソン(スタンリー・トゥッチ演じる)がビクターを厳しく取り扱う場面が多く、これが視聴者に不満やイライラを引き起こすことがあります。
- 時間の経過: ビクターが長期間にわたって空港内で過ごす様子が詳細に描かれているため、観ている人もその閉塞感を共有しやすくなります。彼が次々と困難に直面するたびに、視聴者は共感しつつもイライラを感じることがあるでしょう。
- 他のキャラクターの反応: ビクターに対する他のキャラクターの反応、特に冷淡だったり非協力的だったりする態度も、視聴者のイライラを助長する要因となります。
- 人間関係の複雑さ: ビクターが空港内で築く人間関係も、時には誤解や摩擦を引き起こし、これがドラマを盛り上げる一方で、視聴者にストレスを感じさせることがあります。
映画ターミナル:空港どこ
この映画の舞台となった空港は、アメリカ・ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の国際線ロビーです。しかし、実際の空港を利用して撮影しているのではなく、それに似せて作られた巨大セットなのが驚きです。観ていても違和感のないクオリティの高さに脱帽です。でも、だからこそ自在なカメラワークで観る者を魅了させる展開となっているのかもしれません。
映画ターミナル:モデル
この映画のモデルとなったのは、イラン人のマーハン・カリミ・ナセリという方で、1988年から18年越えという長い年月をパリのシャルル・ド・ゴール空港で暮らしていたようです。もともとは政治に対する反対運動で国外追放となり、難民と認定されたものの必要な書類を不携帯という状況となってしまった為、空港内から出る事が出来なくなってしまったのでした。
その後はフランス赤十字の力添えで、パリ郊外のホームレス支援施設へと移動していった模様です。そして2022年に亡くなった場所というのもこの空港という、もう”運命”としか言いようのない最期でした。数奇な運命の彼のご冥福をお祈り致します。
映画ターミナル:結ばれない
映画『ターミナル』において、主人公ビクター・ナボルスキーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じるアメリア・ウォーレンとのロマンスが描かれますが、最終的に二人が結ばれない理由について説明します。
ビクターとアメリアの関係
ビクターは空港で出会った客室乗務員のアメリアに恋心を抱きます。彼らは空港内で何度か会話を交わし、特にビクターがアメリアのために努力を重ねる場面が描かれます。アメリアもビクターに対して好意を持ちますが、彼女の生活もまた複雑です。
結ばれない理由
- アメリアの複雑な関係:
- アメリアは既に既婚の男性との不倫関係にあり、その関係が彼女の心を占めています。彼女はビクターに対して好意を持ちながらも、自分の人生の複雑な状況に縛られています。
- ビクターの目的:
- ビクターは父親の遺志を継いで、ニューヨークであるジャズミュージシャンのサインを集めるという目的があります。この目的を達成することが彼にとって最も重要であり、そのために行動しています。
- 現実の障壁:
- 二人の関係は現実の厳しい状況に阻まれます。ビクターは空港に閉じ込められた状態であり、アメリアもまた自分の人生の問題を抱えています。このため、二人が一緒に未来を築くのは難しい状況です。
- タイミングの問題:
- 二人が出会ったタイミングが悪く、それぞれが抱える問題が解決しない限り、関係を深めることができない状況にあります。
結末
映画の結末では、ビクターはついに空港を出てニューヨーク市内に行くことが許されます。彼は父親の遺志を果たし、最後に目的を達成します。アメリアもまた自分の人生を見つめ直すことになりますが、二人が一緒にいる未来は描かれません。