映画『ジョーズ’87 復讐篇』(原題: Jaws: The Revenge)は、1987年に公開されたアメリカのホラー・スリラー映画です。この作品は『ジョーズ』シリーズの第4作目にあたり、前作までの続編という立ち位置を持ちながらも、シリーズの新たな展開として家族の復讐と執着をテーマに描いています。監督はジョセフ・サージェントであり、彼の手腕により本作はシリーズの原点とも言えるサメの恐怖と、家族の絆に焦点を当てた物語に仕上げられています。主演はロレイン・ゲイリー、マイケル・ケイン、ランス・ゲストなどが務め、それぞれが作品にリアリティと感情的な深みをもたらしています。ロレイン・ゲイリーは『ジョーズ』シリーズでお馴染みのエレン・ブロディ役を再び演じ、家族を守る母親としての苦悩と恐怖を強く表現しています。この映画は、人間と自然の対立、そして復讐というテーマを通じて、観客に深い印象を与えています。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』あらすじ
『ジョーズ’87 復讐篇』は、アミティ島の保安官マーティン・ブロディの未亡人エレン・ブロディ(ロレイン・ゲイリー)を中心に物語が展開します。物語は、ブロディ家に新たな不幸が訪れるところから始まります。エレンの息子であるショーン・ブロディ(ミッチェル・アンダーソン)は、アミティ島で保安官として勤務していましたが、ある夜、港で起きた事故の対応中にサメに襲われ命を落とします。この出来事はエレンにとって深いトラウマとなり、夫マーティンも心臓発作で亡くなっているため、彼女は家族がサメに呪われていると考えるようになります。
エレンは息子マイケル(ランス・ゲスト)の招待を受けて、バハマに移り住むことを決意します。マイケルは海洋学者として働いており、妻カーラ(カレン・ヤング)と娘テアと共にバハマで生活しています。しかし、エレンの恐怖は消えることなく、彼女はサメが自分たちの家族を追い続けているという強い思いを抱いています。彼女の不安は現実のものとなり、巨大なホオジロザメが再びブロディ家の命を脅かします。
マイケルとその友人であるジェイク(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)は、サメを追跡し対策を講じようとしますが、サメの襲撃は彼らの生活を脅かし続けます。一方で、エレンはパイロットのホーギー(マイケル・ケイン)と出会い、彼との友情やロマンスを通じて少しずつ心の平安を取り戻そうとします。しかし、サメは執拗にブロディ家を狙い続け、ついにクライマックスではエレンがサメに立ち向かう決意を固め、直接対決に挑みます。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』ネタバレ
物語のクライマックスでは、サメの存在に怯える家族のために、エレンはついに決意を固めて海へ向かいます。彼女はサメと対峙することで家族にかかる「呪い」を断ち切ろうとし、サメを追って自らヨットに乗り込みます。ホーギー、マイケル、ジェイクらも彼女を助けるために海へ向かい、サメとの最後の対決が繰り広げられます。
クライマックスのシーンでは、エレンがサメに対する復讐心を燃やし、サメがヨットに攻撃を仕掛けてきた瞬間にヨットのマストを使ってサメを突き刺すという場面が描かれます。このシーンでは、サメが絶命し、ついにエレンは家族に対する恐怖と呪いから解放されることになります。また、サメとの対決の過程でジェイクがサメに襲われますが、彼は奇跡的に生き残り、最終的に仲間たちと再会することができました。
この映画のラストは、ブロディ家がついにサメの脅威から解放され、エレンが自らの恐怖を乗り越えた象徴として描かれています。エレンはホーギーと共に穏やかな海を眺めながら、自らの心の平和を取り戻したかのように見えます。この結末は、家族を守るための勇気と、自然に立ち向かう人間の強さを象徴しています。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』考察
『ジョーズ’87 復讐篇』は、ホオジロザメとの戦いだけでなく、「家族の絆」や「復讐」というテーマが強く描かれています。エレン・ブロディは、家族を次々に失う中で、サメに対する執念や恐怖が彼女の心を支配していきます。この物語は、ただのサメ映画としての恐怖だけでなく、愛する者を失うことで感じる深い悲しみとその恐怖に立ち向かうための勇気を描いたものでもあります。
また、エレンがサメに立ち向かうという行動は、彼女の中で「家族を守る」という使命感が復讐心と絡み合い、彼女を突き動かしていることを示しています。サメが「復讐」をするという設定自体には多くの疑問を投げかける観客もいますが、それを通じて描かれるエレンの感情的な旅路には深いメッセージ性が含まれています。
さらに、映画全体を通して描かれる「自然の脅威に対する人間の挑戦」というテーマも、このシリーズの一貫した要素であり、現代社会における自然災害や環境問題に対する人々の立ち向かい方にも通じるところがあります。本作は、前作の物語を直接的に引き継いでいるというよりは、エレンの視点から新たな形で恐怖と対峙する姿を描いており、その点でシリーズの中でも異色の作品と言えます。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』キャスト
『ジョーズ’87 復讐篇』のキャストは、シリーズにおいて重要な役割を果たす人物たちを再び呼び戻しています。ロレイン・ゲイリーはエレン・ブロディ役として復帰し、夫マーティンと息子ショーンを失った母親の痛みと恐怖、そして強さを見事に表現しました。彼女の演技は、家族を守る母親の感情に満ちており、物語の中心に据えられることで、映画の感情的な深みを与えています。
マイケル・ケインは、エレンの新たな友人でありロマンチックな関係にも発展するホーギー役を演じました。ケインのキャラクターは、エレンの心の支えとなり、彼女が持つ恐怖と悲しみに寄り添う存在として描かれています。彼の演技は、映画全体に少しの軽さと人間味を加え、緊張感のある物語における重要なバランスを提供しています。
ランス・ゲストは、エレンの息子であり、海洋生物学者であるマイケル・ブロディを演じました。彼のキャラクターは科学者としての視点からサメと対峙することで、映画における理性的な対処の姿勢を示しており、家族を守るために奮闘する姿が印象的です。また、ジェイクを演じたマリオ・ヴァン・ピーブルズは、物語に活力とユーモアをもたらし、マイケルと共にサメとの戦いに挑むシーンで重要な役割を果たしています。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』原作
『ジョーズ’87 復讐篇』は、シリーズの他の作品と同様にピーター・ベンチリーの小説『ジョーズ』からインスピレーションを受けています。しかし、本作はオリジナルの脚本に基づいており、原作とは直接の関連はありません。この映画は、シリーズの続編として、サメが特定の家族に対して執着し、復讐を遂げようとするというフィクション的なアイディアを中心に展開されています。そのため、本作は初期の『ジョーズ』のリアリズムよりも、より超自然的で感情的な要素に重きを置いています。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』評価
映画『ジョーズ’87 復讐篇』は、公開当初から批評家や観客からさまざまな評価を受けました。多くの批評家は、映画のプロットの非現実的な展開やサメが特定の家族に「復讐」するという設定に対して批判的であり、そのストーリーの強引さについて疑問を呈しました。特に、サメがまるで人間のように意図的な行動をとるという点において、多くの観客が納得しづらいと感じたようです。そのため、シリーズの中でも最も低い評価を受けることが多い作品となっています。
しかしながら、一部の観客やシリーズのファンからは、エレン・ブロディが主人公として再登場し、彼女のキャラクターに焦点を当てたことに対する評価もありました。また、マイケル・ケインの出演が映画にユーモアと軽快さをもたらしており、物語の緊張感を和らげる存在として好意的に受け入れられました。興行収入の面では、シリーズの初期作と比較すると控えめな結果でしたが、それでも続編として一定の興味を引きつけました。
映画『ジョーズ’87 復讐篇』見どころ
『ジョーズ’87 復讐篇』の見どころは、何といってもサメとの緊張感あふれる対決と、それに伴う人間ドラマにあります。特にクライマックスのシーンで、エレンがサメと対峙する場面は、家族のために自らの恐怖を克服して戦う母親の姿が描かれており、感情的な盛り上がりを見せます。サメがヨットに襲いかかるシーンや、海の中での追跡劇は視覚的にも迫力があり、サメ映画ならではのスリルが存分に楽しめます。
また、エレンとホーギーの関係が描かれるシーンも、物語に人間的な側面と温かみを与えています。エレンが悲しみから少しずつ解放され、ホーギーと新たな関係を築こうとする様子は、映画全体の中で緊張の緩和をもたらし、彼女の成長を感じさせます。加えて、映画全体に漂う80年代特有の雰囲気や音楽も、シリーズのファンにとって懐かしさを感じさせる要素となっており、時代の特徴を感じさせる演出が施されています。
『ジョーズ’87 復讐篇』は、シリーズの他の作品と比べると、批評的には厳しい評価を受けることが多いですが、家族を守るためのエレンの決意や、サメという脅威に立ち向かう姿勢は、勇気と強さを象徴しており、観客に感動を与える場面も存在します。