映画『ランボー』(原題:First Blood)は、1982年に公開されたアクション映画であり、主人公ジョン・ランボーを演じたシルヴェスター・スタローンの代表作として知られています。
この作品は、アクション映画の枠を超え、戦争の後遺症や社会の不公正さをテーマに据えた、深みのあるドラマ性が評価されています。監督はテッド・コッチェフが務め、共同脚本としてスタローン自身も参加しました。
ランボーはベトナム戦争の帰還兵であり、戦争から帰った後も心に深い傷を負い、社会からの孤立に苦しむ姿が描かれています。この物語はデヴィッド・マレルの小説『一人だけの軍隊』(1972年)を原作としており、原作とは異なる視点と結末が特徴的です。
映画『ランボー』見どころ
本作の魅力は、圧倒的なアクションだけでなく、人間ドラマの深みを持つところにあります。映画の序盤では、ランボーが小さな田舎町に足を踏み入れるところから物語が始まります。
一見静かな町に見えるこの場所が、次第に緊張感あふれる戦場へと変貌していく様子は、観客に強烈な没入感を与えます。ランボーが町の保安官とその部下たちから不当な扱いを受け、山中に追い詰められながらも、その卓越したサバイバルスキルを駆使して反撃していく展開は息をのむ迫力があります。
特に注目すべきは、ランボーが山中で繰り広げるゲリラ戦術です。落とし穴やトラップを巧みに仕掛け、敵の隙を突いて追っ手を無力化していくシーンは、彼が軍人としての訓練を受けたエリートであることを見事に示しています。
また、終盤にランボーが軍のトラウトマン大佐と対峙するシーンでは、単なるアクション映画とは異なる重厚なドラマ性が描かれます。戦争のトラウマを抱える彼が感情を爆発させる場面では、観客に戦争の現実や帰還兵の苦しみを深く考えさせるきっかけを提供します。
さらに、本作では音楽の使い方も秀逸です。ジェリー・ゴールドスミスが手がけたスコアは、映画全体に緊張感と感動をもたらし、アクションの合間にランボーの心情を巧みに反映しています。
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映画『ランボー』あらすじ
ジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、ベトナム戦争からの帰還兵で、かつてのグリーンベレー隊員として数々の任務を成功させた英雄です。しかし、戦争が終わり平和な日常に戻った後も、彼は戦場でのトラウマと帰還兵への冷たい社会の対応に苦しんでいました。
ある日、彼は生き残った戦友を訪ねるため、アメリカ北西部の小さな田舎町に足を踏み入れます。しかし、その友人がすでに亡くなっていることを知り、深い孤独感に苛まれながら町をさまよい歩きます。
そこへ現れたのが町の保安官ウィル・ティーズル(ブライアン・デネヒー)でした。ティーズルはランボーを不審者と見なし、町から追い出そうとしますが、これがさらなる悲劇の引き金となります。ティーズルはランボーを逮捕し、警察署で非人道的な扱いを加えます。警察の理不尽な行動により、ランボーの中に眠っていた戦場での記憶が蘇り、彼は反射的に逃走を図ります。
彼が逃げ込んだ山中では、警察の追っ手を巧みにかわしながら生き延びていく姿が描かれます。ランボーは、敵地で鍛え上げたサバイバル技術を駆使し、追跡者を無力化していきます。一方で、彼を止めようとする軍のトラウトマン大佐(リチャード・クレンナ)が登場し、事態はさらに緊迫していきます。
映画『ランボー』ネタバレ
ランボーは山中で巧妙なゲリラ戦術を展開し、次々と警察の追跡隊を翻弄します。彼のサバイバルスキルと戦闘能力は圧倒的で、追跡者たちは次第に恐怖に陥ります。しかし、事態がエスカレートする中、ティーズル保安官は軍のトラウトマン大佐に助けを求めます。
トラウトマンはランボーの元上官であり、彼の能力を誰よりも理解しています。トラウトマンはランボーに降伏を促しますが、ランボーはそれを拒否し、社会への怒りと戦場での記憶に突き動かされます。
物語のクライマックスでは、ランボーが町に戻り、武装して警察署に乗り込むシーンが描かれます。彼はティーズル保安官と一対一の対決を繰り広げますが、最終的にはトラウトマン大佐が介入し、ランボーを説得します。この説得の中で、ランボーは自分の内なる傷と向き合い、涙ながらに戦争の悲惨さと帰還兵の孤独を語ります。最終的に彼は逮捕され、物語は幕を閉じます。
本作は単なるアクション映画にとどまらず、戦争が人間にもたらす悲劇的な影響と、それが社会全体にどのような波紋を広げるかを深く掘り下げた作品です。主人公ジョン・ランボーは、かつての戦場では英雄として活躍したものの、帰還後の平和な社会では理解されず、疎外される存在として描かれています。
これはベトナム戦争後のアメリカ社会で、帰還兵たちが直面した現実を象徴しています。戦争から戻った兵士たちは、戦地でのトラウマを抱えながら、日常生活に戻ることを余儀なくされ、同時に偏見や差別にもさらされました。ランボーというキャラクターは、その痛みと孤独を体現する存在です。
特に注目すべきは、ランボーの暴力的な行動が単なる「反社会的な行動」ではなく、戦争が彼に刻み込んだ傷跡と、生き延びるために身につけた術が、平和な社会の中で不適応を引き起こしている点です。彼の行動は、自らの尊厳を守り、生存本能に従った結果であり、それを悪と捉えるか、悲劇と捉えるかは観客次第です。
また、ラストシーンでのトラウトマン大佐との対話は、作品の核心部分といえます。ランボーが涙ながらに戦争の惨状を語るシーンは、ただの個人的な苦しみを超え、戦争というものが社会にどのような代償を求めるのかを問いかける、極めて重要な場面です。ここで彼が訴える「帰る家がない」という言葉は、帰還兵全体の孤独感を象徴するものとして、深い感慨を与えます。
さらに本作は、戦争経験者がどのように社会と向き合い、再び受け入れられるべきかという問題を提示する一方で、権威主義的な警察組織や体制の不寛容さも批判しています。
保安官ティーズルの行動は、彼自身の偏見や権威を守るためのものに過ぎず、戦争を生き抜いたランボーのような人物にとって、さらなる孤独感を増幅させる存在として描かれています。こうした視点を通じて、本作はアクション映画としての爽快感を提供しつつも、戦争と社会の関係性という複雑なテーマを観客に投げかけているのです。
映画『ランボー』キャスト
映画『ランボー』では、個性的で実力派のキャスト陣が集結しています。主人公ジョン・ランボーを演じたのは、当時すでに『ロッキー』シリーズでスターとしての地位を築いていたシルヴェスター・スタローンです。スタローンは、この役を通じて戦場帰りの兵士の複雑な内面を見事に表現し、アクションスターとしての評価を確固たるものにしました。彼の演技は、ランボーの持つ孤独と怒り、そして脆さを観客に強烈に訴えかけます。
ランボーの元上官であり、彼の唯一の理解者として登場するサミュエル・トラウトマン大佐を演じたのは、リチャード・クレンナです。彼の落ち着いた演技と説得力のあるキャラクターは、物語全体に緊張感と深みを与えています。
さらに、ランボーを追い詰める保安官ウィル・ティーズルを演じたブライアン・デネヒーの存在感も忘れることはできません。ティーズルは一方的にランボーを排除しようとする人物でありながら、単なる悪役ではなく、地方の保安官としてのプライドや職務へのこだわりを感じさせる複雑なキャラクターです。これらのキャストの演技が本作をさらに魅力的なものにしています。
映画『ランボー』原作
本作の原作は、デヴィッド・マレルによる小説『一人だけの軍隊』(原題:First Blood)です。この小説は1972年に発表され、公開当時のアメリカ社会が抱えていた戦争と帰還兵の問題を象徴的に描いた作品として評価されました。
映画版とは異なり、小説ではランボーが警察との対立の末に自らの命を絶つという結末を迎えます。この結末は、戦争が個人に与える破壊的な影響を強調するものとして、非常に衝撃的で重いメッセージを持っていました。
しかし映画版では、より普遍的なテーマに昇華させるため、トラウトマン大佐の説得を通じてランボーが生き延びるという結末に改変されています。この改変により、映画版はエンターテインメント性を保ちながらも、原作が持つ社会的テーマを損なわない作品に仕上がりました。
映画『ランボー』評価
映画『ランボー』は、公開当時から批評家や観客の間で大きな反響を呼びました。興行収入は世界中で大成功を収め、アクション映画としてのエンターテインメント性が広く評価されましたが、それ以上に、戦争後遺症や社会的疎外をテーマにした重厚なストーリーが観客の心をつかみました。
また、スタローンの演技は多くの批評家から絶賛され、彼が単なるアクション俳優ではなく、深みのあるキャラクターを演じる力を持っていることが証明されました。
さらに、本作は後のアクション映画に多大な影響を与えた作品でもあります。特に、単独の主人公が圧倒的な逆境に立ち向かうというストーリー構成は、その後の多くの映画で踏襲されることになりました。
『ランボー』は、社会問題を扱う真摯な姿勢と、スリリングなアクションが見事に融合した作品として、今日に至るまで語り継がれる名作です。興行収入だけでなく、アクション映画史における重要な一作としてその地位を確立しています。
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