映画『目撃』(原題:Absolute Power)は、1997年に公開されたアメリカのサスペンス映画です。クリント・イーストウッドが監督・製作・主演を務めたこの作品は、権力の腐敗と正義を追求する個人の葛藤をテーマに描かれています。エド・ハリスやジーン・ハックマン、ローラ・リニーなど豪華なキャストが集結し、緊張感あふれる物語を織りなします。
この映画は、デイヴィッド・バルダッチによる1996年の小説『Absolute Power』を原作としており、原作の骨格を活かしつつも、映画としての魅力を高めるためにいくつかの改変が加えられています。クリント・イーストウッドが演じる主人公ルーサー・ホイットニーは、熟練した泥棒でありながら、偶然にも国家権力の犯罪を目撃してしまい、命を狙われることになります。物語は彼がその陰謀を暴き、真実を明らかにする過程を中心に展開されます。
映画『目撃』あらすじ
物語の始まりは、熟練の泥棒ルーサー・ホイットニー(クリント・イーストウッド)が政界の大物であるウォルター・サリヴァン(E・G・マーシャル)の豪邸に侵入するところから始まります。
ルーサーはそこで、サリヴァンの若い妻クリスティ(メロラ・ハーディン)と、現職のアメリカ大統領アラン・リッチモンド(ジーン・ハックマン)がいる現場を目撃します。二人の間で激しい言い争いが始まり、リッチモンドがクリスティに暴行を加えます。さらに、その場にいたシークレットサービスのエージェントたちがクリスティを射殺するという衝撃的な事件が発生します。
この一部始終を隠し部屋から目撃していたルーサーは、犯罪の唯一の目撃者として、事件現場から脱出を試みます。現場から逃れる際、クリスティが身につけていたネックレスを偶然持ち去ったことで、彼は証拠品を手にすることになります。一方、リッチモンド大統領とその側近たちは事件を隠蔽するため、シークレットサービスを使ってルーサーを追い詰めようとします。
ルーサーは娘のケイト(ローラ・リニー)との関係を修復しながら、大統領の罪を暴こうと奮闘します。一方で、事件を捜査するセス・フランク刑事(エド・ハリス)は、次第にルーサーの無実を信じるようになり、彼と協力して真実を明らかにしようとします。
映画『目撃』ネタバレ詳細
ルーサーは、事件の核心を握るネックレスを手がかりに、リッチモンド大統領の罪を明らかにする計画を練ります。彼は巧妙な策略でリッチモンドの側近であるグロリア・ラッセル(ジュディ・デイヴィス)を揺さぶり、彼女から隠された情報を引き出します。一方、クリスティの夫であるウォルター・サリヴァンも妻の死に疑念を抱き始め、独自に調査を進めます。
物語のクライマックスでは、サリヴァンがリッチモンド大統領と対峙し、彼を追い詰めます。最終的に、リッチモンドは自らの罪を認めることなく、精神的な重圧に耐えきれず自殺します。これにより、事件は終息し、ルーサーとケイトは新たな関係を築き始めます。
映画『目撃』考察
『目撃』は、権力の持つ腐敗性と、個人の正義感が交錯するテーマを巧みに描いています。特に興味深いのは、主人公ルーサーが「泥棒」という社会的に低い地位にいながらも、道徳的な正しさを持ち合わせている点です。一方で、リッチモンド大統領は最高権力者でありながら、その権力を悪用し、破滅的な結末を迎えます。この対比は、映画全体を通して一貫したテーマとなっています。
また、ルーサーと娘ケイトの関係性も物語の重要な要素です。映画の中で、二人は徐々に心の距離を縮めていきますが、そのプロセスは非常に丁寧に描かれています。これにより、単なるサスペンス映画としてだけでなく、家族の絆を描いた人間ドラマとしての深みも与えられています。
映画『目撃』キャストと演技
- ルーサー・ホイットニー(クリント・イーストウッド):熟練の泥棒でありながら、正義感と知恵を駆使して権力と戦う主人公。
- アラン・リッチモンド大統領(ジーン・ハックマン):冷酷で権力に溺れる大統領を迫力満点に演じる。
- セス・フランク刑事(エド・ハリス):事件の真相に迫る正義感あふれる刑事。
- ケイト・ホイットニー(ローラ・リニー):父との関係を修復しながら、物語に感情的な深みを与えるキャラクター。
- グロリア・ラッセル(ジュディ・デイヴィス):大統領の側近として、緊迫感を生む重要な役割を果たす。
- ウォルター・サリヴァン(E・G・マーシャル):事件の真相を追求する妻を失った実業家。
キャスト全員が、それぞれの役割を見事に演じ、映画のリアリティと緊張感を高めています。
映画『目撃』原作と改変
デイヴィッド・バルダッチの原作小説『Absolute Power』は、映画とは異なる展開やキャラクターの背景が描かれています。特にルーサーの運命が大きく異なる点が挙げられます。クリント・イーストウッドは映画化にあたり、主人公を観客に好かれるキャラクターとして描くことを重視し、脚本の改変を要請しました。
映画『目撃』評価と興行成績
公開当時、『目撃』は批評家から賛否両論の評価を受けました。一部では緊張感に満ちたストーリーとクリント・イーストウッドの演技が高く評価されましたが、一方で一部のキャラクター描写やプロットの緩みが指摘されました。興行収入は約5000万ドルで、製作費を上回る成績を収めています。
映画『目撃』見どころ
『目撃』の見どころは、権力を持つ人々の暗部を暴き出すスリリングな展開と、父娘の関係を描いた感動的な物語のバランスです。特に、リッチモンド大統領の暴走や、それを追及するルーサーの知略が織りなす緊迫感が最大の魅力です。また、豪邸での脱出シーンやクライマックスの対峙シーンは、映画全体を通じて最も印象的な場面です。
『目撃』は、権力の危うさを描きながらも、家族の絆や個人の正義を深く掘り下げた作品として、今なお観るべき価値のある名作です。